JR上野駅公園口 読了。
今週のフライトで読了、2時間くらいか。
JR上野駅公園口は柳美里(ゆうみり)さんの作品で、2014年に出版された作品ですが、2020年に全米図書賞翻訳部門を受賞した作品です。
英題はtoky ueno station。
JRとか入れない方が読む人にはキャッチーで良いですね。
本作は福島県南相馬市で生まれた男性が、1964年の東京オリンピック開催の為に出稼ぎ労働者として上京するところから始まり、家族をもつも、ほとんど一緒に暮らす事なく不幸が続き
ホームレスとなり(明言はされてないが)自死するまでが描かれている。
1人の男の暗い道を歩かざるを得なかった描写と対極に生後の日本の発展や時代の躍動感みたいなものが、天皇という象徴を中心に対比的として書かれている。
そして、東日本大震災を傍観する悲惨な
描写からの
聞き慣れたJR東日本のアナウンスでフッと物語は終わる。
事切れると表現した方がすんなり伝わるかもしれない。
上野駅は東北の方達が最初に降り立つ駅であるという。もちろん故郷に帰る駅も上野駅だ。
そこに帰る場所の無くした東北の方がホームレスに多いとのこと。
柳美里さんは、上野駅公園口にいるホームレスへのインタビューを続け、
そして、福島県南相馬市にて拠点を構えて、地域の方の話を聞き続けて本作を書いたらしい。
感想としては本当に救いようの無い、どうしようもない感情が溢れ出る作品。
ただ綺麗とか汚いとか良い悪いの簡単な二元論では語れない細部に焦点があたっており、生きるという事はここまで、
厳しくもあり得るという当たり前を、
突きつけられる。この日本においても。
そういった「見えなくされた」人達の
上に輝かしい日本の発展はあるという事。
行幸啓(天皇皇后が共に外出される事)がある度に山狩りと呼ばれる、ホームレスが暮らすテント村を強制的に移動させられる描写が度々出てくる。
雨で冬でもそれは関係なく。
「見えなくされてきた」人の思いを外側から読むのではなく、当事者の視点で
体験するというのが正しいと思われる。
作中、ずっと働いてきた主人公がつぶやく、
どんなきつい仕事にも慣れてはこれたけども、生きる事にだけは慣れなかった。
重く響いた言葉である。
感想を書くにあたり、
2020年作者の受賞の記者会見を1時間19分を聞いた。
こちらにて、
・JR上野駅公園口が連作の5作目だったこと
・2012年、震災後、柳美里さんは
福島県に移り住み、震災ラジオ番組を7年間続けた事。
・南相馬市にはブックギャラリー兼、
演劇場、そしてカフェフルハウスを
オープンさせて、地域の方と密な地域づくりをされている事。
・自身のアイデンティティの事。
・著者は外側から出来事を書くのではなく、その人の人生を内視鏡のように
描き、読者に内側からその人の生きた軌跡を体験してもらうのだという作家論。
大変有意義な読書体験でした。
柳美里さんの作品も気になるが、
全米図書賞受賞作品が気になるので、
それを読もう。
これでわかる人がいたら凄い。